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美容室の歩合給、最低賃金を下回っていない?2026年10月引き上げに備えるチェック方法を税理士が解説

「うちのスタイリストは歩合給だから、最低賃金なんて関係ない」——そう思っていませんか。実は歩合給・出来高払いの給与体系であっても、最低賃金額を下回ることは法律上認められていません。指名料や売上歩合を中心とした給与設計をしているサロンほど、最低賃金の引き上げがあった年は「気づかないうちに違反していた」というケースが起こりやすいものです。2026年10月には全国で最低賃金の改定が予定されており、大阪府をはじめ多くの地域で時給が引き上げられます。この記事では、歩合給スタッフの給与が最低賃金を満たしているかどうかの具体的な確認方法を、美容室の実務に即して税理士が解説します。

2026年10月から最低賃金が引き上げられます

厚生労働省大阪労働局の発表によると、大阪府の地域別最低賃金は令和8年(2026年)10月1日から時間額1,231円に改定されます。現行の1,177円から54円の引き上げとなり、6年連続の引き上げです。改定後は、パート・アルバイトはもちろん、正社員・契約社員を問わず、大阪府内で働くすべての労働者に適用されます。

最低賃金の改定は都道府県ごとに行われ、発効日も異なります。2026年度は10月1日から12月2日にかけて、都道府県ごとに順次発効する見込みです。大阪府以外で店舗を運営しているオーナーは、管轄の都道府県労働局のウェブサイトで最新の改定額・発効日を必ず確認してください。

歩合給・出来高払いにも最低賃金は適用される

美容室でよく見られる「固定給+歩合給」「歩合給のみ」「指名料込みの出来高払い」といった給与体系は、労働基準法上の「出来高払制その他の請負制」に該当します。この場合でも、最低賃金法第4条の適用は変わりません。売上が振るわない月や、新人で指名がまだ少ない時期であっても、労働時間に対する賃金が最低賃金額を下回ることは許されないのです。

保障給(労働基準法第27条)という考え方

労働基準法第27条は、出来高払制などの請負制で働く労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金を保障する「保障給」を定めるよう使用者に義務づけています。保障給は「1時間につきいくら」という形で時給として定める必要があり、売上が低い月でもスタッフの生活が著しく不安定にならないようにする趣旨の規定です。歩合給中心の給与規程を設計する際は、保障給の定めがあるかどうかも合わせて見直しておく必要があります。

最低賃金を満たしているかの具体的な確認方法

歩合給スタッフの賃金が最低賃金を満たしているかは、次の2ステップで確認します。

ステップ1:比較対象となる賃金を洗い出す

最低賃金法施行規則第1条により、次のような賃金は最低賃金との比較から除外されます。

  • 家族手当・通勤手当・精皆勤手当
  • 時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金
  • 結婚手当など臨時に支払われる賃金
  • 賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

一方、基本給や歩合給(売上歩合・指名料歩合を含む)は、原則として最低賃金の比較対象に含まれます。美容室の給与体系では、指名料や店販歩合を「手当」として別建てにしているケースがありますが、名目が「手当」であっても実質的に労働の対価であれば比較対象に含まれる点に注意が必要です。

ステップ2:実労働時間で割って時給換算する

比較対象の賃金の合計額を、その賃金計算期間中の実労働時間の合計で割り、時間額に換算します。この時間額を、その地域の最低賃金額と比較します。

計算例

大阪府内のサロンで、固定給と歩合給を組み合わせているスタイリストのケースで考えてみます。

項目 スタイリストAさん アシスタントBさん(入社間もない)
固定給 150,000円 170,000円
歩合給(指名料込み) 80,000円 0円
比較対象賃金合計 230,000円 170,000円
当月の実労働時間 176時間 176時間
時給換算 約1,307円 約966円
大阪府最低賃金(2026年10月〜) 1,231円 1,231円
判定 クリア 下回っている

アシスタントBさんのように固定給だけでも下回るケースは稀ですが、歩合給の比重が大きく固定給を低めに設定している給与体系では、閑散期や新人期間に時給換算額が最低賃金を下回りやすくなります。特に「歩合給のみ」「低い固定給+高歩合率」で設計しているサロンは要注意です。

給与体系別に見る注意点

美容室は職種・キャリア段階によって給与体系が混在しやすい業種です。それぞれの立場で最低賃金チェックのポイントが異なります。

給与体系 最低賃金チェックのポイント
アシスタント(時給制) 時給そのものが最低賃金額以上になっているかを確認するだけで足りるが、練習時間・研修時間が「労働時間」に該当するかの判断が別途必要
スタイリスト(固定給+歩合給) 固定給だけでは最低賃金を下回らなくても、歩合給まで含めた合計と実労働時間から時給換算し、下回っていないか毎月確認する
スタイリスト(完全歩合給) 保障給の定めが就業規則・雇用契約書にあるか、保障給自体が最低賃金を満たす水準かを確認する
ネイル・まつエク(施術単価×本数) 指名・回数券・オプションメニューの歩合を含めた合計額で時給換算する

なお、地域別最低賃金とは別に、特定の業種で労使が合意して定める「特定(産業別)最低賃金」という制度もありますが、美容業・理容業を対象とした特定最低賃金は基本的に設定されていません。念のため、厚生労働省や自店舗の都道府県労働局のウェブサイトで、自社の業種が対象になっていないかを確認しておくと安心です。

毎月の給与計算に組み込みたいチェックの流れ

  • 給与計算ソフトやシフト管理システムから、スタッフごとの当月実労働時間を集計する
  • 比較対象となる賃金(基本給+歩合給・指名料など)の合計を実労働時間で割り、時給換算額を出す
  • 時給換算額と、その時点で適用される最低賃金額を比較する
  • 下回っているスタッフがいれば、当月の給与に差額を上乗せして支払う
  • 歩合率・保障給の水準が恒常的に不足している場合は、就業規則・賃金規程の改定を検討する

クラウド給与計算ソフトの多くは、時給換算のアラート機能を持たないものもあるため、最低賃金の改定時期(多くの地域で10月前後)には、手作業でのダブルチェックを1年に一度は行っておくと安心です。

最低賃金を下回っていた場合の対応

計算の結果、実際の時給換算額が最低賃金を下回っていた場合、使用者はその差額を支払う義務があります。是正が遅れるほど遡って支払う金額が大きくなるため、毎月の給与計算の中で早めに確認する仕組みを作ることが重要です。

地域別最低賃金に違反した場合、最低賃金法第40条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。罰則の適用有無にかかわらず、労働基準監督署からの是正指導や、スタッフとの信頼関係への影響も無視できません。歩合率や保障給の水準は、最低賃金の改定タイミングに合わせて定期的に見直すことをおすすめします。

美容室特有の注意点

雇用契約と業務委託契約を混同しない

面貸し・業務委託契約でサロンに所属するフリーランス美容師は、労働基準法上の労働者に該当しないため、最低賃金法の直接の適用対象ではありません。ただし、実態として指揮命令を受けて働いている場合は「偽装請負」とみなされ、雇用契約とみなされるリスクがあります。契約形態と実態が一致しているかも、最低賃金対応とあわせて確認しておきたいポイントです。

歩合率の見直しは就業規則・賃金規程の変更を伴う

歩合率や保障給の額を変更する場合は、就業規則・賃金規程の変更手続きが必要になることがあります。スタッフに不利益となる変更は、周知や合意形成の手順を踏まないとトラブルの原因になるため、社会保険労務士など専門家と連携しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

Q. 研修中で歩合給がまだ発生していないスタッフも対象ですか?

A. 対象になります。試用期間中であっても、労働基準法上の労働者である以上、最低賃金は適用されます。ただし、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、試用期間中の労働者について最低賃金の減額特例が認められることがあります。減額の可否や割合は許可制であり、自己判断で給与を減額することはできません。

Q. 店販手当や指名料は歩合給として扱ってよいですか?

A. 名称にかかわらず、労働の対価として支給されるものであれば、最低賃金の比較対象に含めて計算するのが基本的な考え方です。手当という名目にしても、実質的な歩合給であれば除外できない点に注意してください。

Q. パート・アルバイトのシャンプー担当スタッフも同じ考え方でよいですか?

A. 雇用形態にかかわらず、労働基準法上の労働者であれば最低賃金は同じように適用されます。時給制であっても、歩合的な手当(本数に応じた手当など)を支給している場合は、その分も合算して時給換算額を確認してください。

まとめ

2026年10月からの最低賃金引き上げにより、大阪府は時給1,231円となる見込みです。歩合給や出来高払いの給与体系であっても最低賃金法の適用は変わらず、固定給と歩合給(指名料含む)の合計額を実労働時間で割った時給換算額が、最低賃金額を上回っているかを確認する必要があります。特に新人期間や閑散期で歩合が伸び悩むスタッフがいる場合は、保障給の設定状況も含めて給与規程を見直しておきましょう。最低賃金は毎年改定されるため、10月の改定時期に合わせて年に一度は全スタッフの時給換算額をチェックする習慣をつけることが、労務トラブルの予防につながります。

最低賃金の引き上げに合わせて賃上げ促進税制を活用できるケースもあります。また、歩合給スタッフの賞与計算や、歩合給が絡む残業・36協定の実務もあわせて確認しておくと安心です。

この記事の内容でご不明な点や、自店の給与体系が最低賃金を満たしているかの具体的な確認が必要な場合は、美容室専門の税理士事務所フェリスにお気軽にご相談ください。

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