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美容室が業務委託の美容師・外注先と取引するときのフリーランス法|契約書・報酬60日払い・解除予告のポイントを税理士が解説

「業務委託のスタイリストさんと、契約書は交わしていないけれど長年お付き合いしている」「報酬の支払いは、お店の資金繰りの都合でつい翌々月になることがある」。そんなサロン運営の“あるある”が、2024年11月から施行されている「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(通称:フリーランス法)では、守るべきルールの対象になっている場合があります。

税金の話ではありませんが、業務委託の美容師さんやアイリスト、ネイリストさんとの取引はサロン経営の根幹です。年末にかけて契約更新や報酬の見直しをする店も多いこの時期に、一度ルールを整理しておきましょう。この記事では、厚生労働省の資料をもとに、美容室オーナーが押さえておきたいポイントをまとめます。

フリーランス法とは?美容室に関係するのはどんなとき?

フリーランス法は、個人で働くフリーランスが安心して仕事ができるように、発注する側の事業者に取引条件の明示や報酬の期日払いなどを求める法律です。2024年11月1日に施行されました。

美容室でいえば、次のようなケースで「発注事業者」と「フリーランス」の関係が生まれる可能性があります。

  • 店の施術を、業務委託契約の美容師・アイリスト・ネイリストにお願いしている
  • 撮影や販促物の制作を、フリーのカメラマンやデザイナーに依頼している
  • SNS運用やホームページ更新を、個人の事業者に外注している
  • 講習会の講師を外部の個人に依頼している

なお、同じ「業務委託」「面貸し」という呼び方でも、契約の実態はサロンごとに異なります。たとえば、席を借りて自分のお客様に施術する形(いわゆる面貸し)と、サロンの業務を請け負って報酬を受け取る形では、法律上の位置づけが変わり得ます。自店の契約がどちらに当たるかは、契約書の内容と実際の運用をふまえて判断する必要があります。

「フリーランス」と「発注事業者」の定義

厚生労働省のパンフレットでは、次のように定義されています。

区分 定義
特定受託事業者(フリーランス) 業務委託を受ける事業者で、①個人であって従業員を使用しないもの、または②法人で代表者以外に役員がおらず、かつ従業員を使用しないもの
特定業務委託事業者 フリーランスに業務委託をする事業者で、①個人で従業員を使用するもの、または②法人で二以上の役員がいる、または従業員を使用するもの
業務委託事業者 フリーランスに業務委託をする事業者(フリーランスも含む)

ここでいう「従業員を使用」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うことを指します。同居の親族だけを使用している場合は含まれません。スタッフを雇っているサロンの多くは、「特定業務委託事業者」にあたると考えられます。

つまり、一人サロンのオーナーが別のフリーランスに仕事を頼む場合でも、取引条件の明示など一部の義務は対象になり得ます。一方、従業員のいるサロンは、より多くの義務の対象になります。

美容室オーナーが押さえたい発注側の義務

パンフレットでは、発注事業者の義務を「取引の適正化」と「就業環境の整備」に分けて整理しています。全体像は次のとおりです。

内容 対象となる業務委託の期間
取引条件の明示(第3条) 期間を問わない
期日における報酬支払(第4条) 期間を問わない(特定業務委託事業者)
7つの禁止行為(第5条) 1か月以上
募集情報の的確表示(第12条) 募集を行うとき
育児介護等と業務の両立への配慮(第13条) 6か月以上
ハラスメント対策の体制整備(第14条) 期間を問わない
中途解除等の事前予告・理由開示(第16条) 6か月以上

※第4条以下の義務は、従業員を使用するなどの「特定業務委託事業者」が対象です。自店がどの区分に当たるかは、上の定義を参考に確認してください。

1. 取引条件は書面かメール等で明示する

業務委託をしたら、報酬や業務内容などの取引条件を、書面または電磁的方法(メール、SMS、SNSやチャットのメッセージなど)で明示する必要があります。電話や口頭だけで伝えるのは認められません。書面の様式に決まりはなく、契約書でなくても、発注書やメールで構いません。

明示すべき主な事項は次の8項目です。

  • 業務委託事業者とフリーランスの名称
  • 業務委託をした日
  • フリーランスの給付の内容(どんな施術・業務をお願いするか)
  • 給付を受領する、または役務の提供を受ける期日
  • 給付を受領する、または役務の提供を受ける場所
  • 検査をする場合は、その完了期日
  • 報酬の額と支払期日
  • 金銭以外で報酬を支払う場合は、その支払方法

サロンの業務委託では、「歩合率や売上の計算方法」「材料費やカード決済手数料を報酬から差し引くかどうか」「指名料の扱い」などを、トラブルになる前に文面で残しておくことが重要です。なお、報酬を差し引く取り扱いは、内容によっては後述の「報酬の減額の禁止」に当たる可能性があるため、あらかじめ合意した計算方法として明示しておく必要があります。

2. 報酬は受領日から60日以内に支払う

報酬の支払期日は、給付を受領した日(役務の提供を受けた日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定める必要があります。「毎月末日締め・翌月末日払い」のような月単位の締切制度も認められますが、月初めに受けた役務の分も60日以内に払う必要があるため、末日締めの場合は翌月末日までに支払期日を設定することになります。

なお、美容室で一般的な「月末締め・翌月15日払い」などは、この範囲に収まります。反対に、「資金繰りが厳しいので翌々月払い」のような運用は、期日の定め方によっては問題になり得ます。

3. 1か月以上の業務委託では、7つの禁止行為に注意

1か月以上の業務委託をしている場合、たとえフリーランスが了解していても、次の7つの行為は禁止されています。

  • 受領拒否
  • 報酬の減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更・やり直し

サロンで気をつけたいのは、たとえば「店販商品を業務委託の美容師に買い取ってもらう」「販促のための撮影やモデルを報酬なしで求める」といった場面です。内容によっては、購入・利用強制や不当な経済上の利益の提供要請に当たるおそれがあります。具体的な判断は個別の事情によるため、迷うときは専門家や公的な窓口に確認してください。

4. 募集するときは、条件を正確に表示する

業務委託のスタイリストをSNSや求人サイトなどで募集する際は、虚偽や誤解を生む表示をせず、正確で最新の内容にする必要があります。「実際の報酬額より高い金額を表示する」「実際に業務委託を行う事業者と別の名義で掲載する」「募集条件から契約条件を変更する」といった例が、違反例として示されています。

5. 6か月以上続く契約では、育児・介護への配慮と、解除前の予告が必要

6か月以上の業務委託(更新により6か月以上継続するものを含む)では、フリーランスから妊娠・出産・育児・介護との両立について申出があった場合、必要な配慮をする義務があります。たとえば、育児のためにシフトを短時間にしたい、介護のために特定の曜日はオンラインで対応したい、といった申出が想定されます。

また、発注側からの契約解除や、更新しない場合には、原則として解除日または契約満了日の30日前までに予告しなければなりません。予告後にフリーランスが理由の開示を求めた場合は、遅滞なく開示する必要があります。なお、次のような例外事由があります。

  • 災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
  • 業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
  • フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合 など

「契約の不更新」は、更新しない意思を持って、契約満了日から1か月以内に次の契約を結ばない場合などを指します。「来月からは来なくていいよ」と突然伝えるような対応は避け、契約書に更新や終了の手順を定めておくと安心です。

6. ハラスメント対策の体制を整える

業務委託に関するハラスメント(セクハラ、パワハラ、マタハラなど)で、フリーランスの就業環境が害されないよう、相談窓口の整備や、方針の明確化と周知などの体制づくりが求められます。就業規則への規定等の措置が必要とされており、スタッフ向けの規定と同様に、業務委託の方々も対象になる点がポイントです。

違反するとどうなる?

違反があった場合、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が、報告の徴収や立入検査、指導・助言を行います。それでも改善されない場合は、勧告、命令、公表といった措置があり、命令に違反した場合は50万円以下の罰金が定められています。また、フリーランスが行政機関に申出をしたことを理由に、取引の停止などの不利益な取扱いをすることも禁じられています(報復措置の禁止)。

「業務委託」のつもりが「雇用」とみなされることも

フリーランス法を守っていても、実態が雇用に近ければ、労働者として扱われる可能性があります。労働基準法上の「労働者」に当たるかどうかは、契約の名称ではなく、働き方の実態で総合的に判断されます。働く時間や場所を細かく指示している、断れない業務指示がある、といった場合は注意が必要です。税務面の影響については、美容室の業務委託が外注費でなく給与認定されるリスクで詳しく解説しています。

また、業務委託・面貸しの美容師さんの労災保険については業務委託・面貸し美容師の労災保険、源泉徴収の考え方は業務委託美容師の報酬が源泉徴収されないのはなぜ?もあわせてご覧ください。

今日からできる、美容室の対応チェックリスト

チェック項目 対応の例
契約内容を文書で残しているか 契約書または発注書、メールで8項目を明示する
報酬の支払期日は60日以内か 「毎月末日締め・翌月末日払い」など具体的な日で定める
差し引くお金のルールが明確か 材料費・決済手数料などの計算方法を事前に合意し、書面に記載する
契約の終了・更新の手順があるか 6か月以上続く契約は30日前の予告を前提に決めておく
募集広告の内容が実態と合っているか 報酬・業務内容・条件を最新の内容に見直す
相談窓口があるか ハラスメントの相談先を決めて、業務委託の方にも周知する

公的な相談先としては、各都道府県の労働局の雇用環境・均等室や、公正取引委員会、中小企業庁の窓口のほか、「フリーランス・トラブル110番」(0120-532-110)などがあります。

まとめ

  • フリーランス法は2024年11月1日に施行されており、業務委託の美容師や外注先の個人事業者との取引にも関係し得る
  • 取引条件は、書面かメール・SNS等で明示する。口頭だけは認められない
  • 報酬は、役務の提供を受けた日から60日以内に支払う
  • 1か月以上の取引では7つの禁止行為、6か月以上の取引では育児介護への配慮と30日前の予告が加わる
  • 面貸しか業務委託か、雇用に近くないかは、契約書と実態の両面で確認する

法令の運用や解釈は、公正取引委員会や厚生労働省の最新の案内で更新されることがあります。実際の契約の見直しでは、契約書の内容や運用を確認したうえで、必要に応じて社会保険労務士や弁護士などの専門家にもご相談ください。

ご相談はフェリスへ

この記事の内容でご不明な点や、自店のケースに当てはめた具体的な判断が必要な場合は、美容室専門の税理士事務所フェリスにお気軽にご相談ください。業務委託の報酬の払い方や、外注費・給与の区分といった税務面から整理します。ご相談は、来所・オンライン面談(Zoom等)・LINE・電話・メールで承っています。

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