美容室オーナー・フリーランス美容師の確定申告はe-Taxで|ID・パスワード方式が令和9年分から使えなくなる前に、年内にやっておく準備を税理士が解説
「毎年2月になってから慌てて申告書を作っている」「閉店後に税務署へ行く時間がなく、郵送で済ませてきた」。サロンを経営していると、確定申告の準備はどうしても後回しになりがちです。
そんな中、e-Tax(電子申告)の使い方が変わりつつあります。国税庁のFAQによると、令和7年10月1日からID・パスワードの新規発行が停止され、ID・パスワード方式は令和9年分の確定申告からは利用できなくなる予定とされています。
この記事では、年内のうちに済ませておきたいe-Tax関連の準備を、美容室・フリーランス美容師の実務に沿って整理します。なお、制度は変更されることがあるため、最新の内容は国税庁の案内で必ずご確認ください。
1. e-Taxの「ログイン方法」で今、何が起きているのか
ID・パスワード方式は新規発行が停止されている
国税庁のe-Taxに関するFAQには、次のとおり案内されています。
- 令和7年10月1日から、国税庁ではIDとパスワードの新規発行を停止している(持っていない人はID・パスワード方式を利用できない)
- すでにID・パスワード方式の届出をしている人は、引き続き利用できる
- ID・パスワード方式は、令和9年分確定申告からは利用できなくなる予定
つまり、いま取得済みのIDとパスワードで申告できていた方も、いずれはマイナンバーカード方式に切り替える必要が出てきます。申告が間近に迫ってから慌てるより、閑散期や年内のうちに一度ログインを試しておくのが安心です。
マイナンバーカード方式とは
国税庁の案内では、マイナンバーカード方式は、マイナンバーカードでマイナポータル経由またはe-Taxのホームページなどからログインするだけで利用でき、事前の税務署への届出やIDの通知は不要とされています。必要なものは、マイナンバーカード、マイナンバーカード読取対応のスマートフォン(またはICカードリーダライタ)、推奨環境を満たす端末、インターネット環境です。
また、スマートフォンに搭載したマイナンバーカード(Androidスマホ用電子証明書搭載サービスやiPhoneのマイナンバーカード)を使う場合は、カードをスマホで読み取らなくても、申告書の作成・e-Taxでの送信ができると案内されています。
| 方式 | 主な特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード方式 | 事前の届出・ID通知が不要。マイナポータルやe-Taxのサイトからログインできる | カードと対応スマホ等が必要。暗証番号の失念・ロックに注意 |
| ID・パスワード方式 | 届出済みの人は従来どおり利用できる | 新規発行は停止済み。令和9年分からは利用できなくなる予定 |
| 書面(郵送・持参) | パソコンやスマホの操作が不要 | 後述の青色申告特別控除の要件に影響する場合がある |
2. 美容室・フリーランス美容師にとって、e-Taxが有利になる理由
青色申告特別控除65万円の要件に関わる
国税庁のタックスアンサーでは、青色申告特別控除の額と主な要件が次のように整理されています。
- 55万円: 事業所得などがあり、複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書などを添付して期限内に提出すること
- 65万円: 上記55万円の要件を満たし、かつ、仕訳帳・総勘定元帳を要件を満たす形で電子帳簿保存するか、確定申告書等をe-Taxで期限内に送信すること
- 10万円: 上記の要件を満たさない青色申告者
面貸し・業務委託で働くフリーランス美容師や、自分ひとりで営むサロンオーナーの場合、事業所得として青色申告をしているケースが多いでしょう。その場合、e-Taxで期限内に送信できるかどうかが、控除額の差に直結することがあります。なお、控除額の上限は各所得の黒字の範囲内で、細かな適用関係は個別の状況で異なります。実際に使える控除額は、ご自身の帳簿の状況をもとに確認してください。
営業時間と相性がよい
税務署の窓口は平日の日中が中心です。美容室は平日の日中が稼ぎどきで、定休日(火曜など)に税務署の混雑する時期と重なることもあります。e-Taxなら、閉店後の夜間や定休日に自宅やサロンのバックヤードで手続きを進められます。
還付・納付の手間が減る
予定納税の減額を申請した方や、源泉徴収されている報酬がある方で還付が見込まれる場合も、e-Taxで申告し、還付金の受取口座を登録しておくと手続きが整理しやすくなります。口座情報は事前に通帳で確認しておきましょう。
3. 年内にやっておきたい「e-Tax準備」チェックリスト
(1) マイナンバーカードの状態を確認する
- カード本体の有効期限が切れていないか
- 電子証明書の有効期限・暗証番号(署名用電子証明書のパスワードなど)を忘れていないか。ロックされている場合は市区町村窓口での手続きが必要になることがある
- スマホで読み取れる設定になっているか
電子証明書の有効期限や暗証番号の仕様は、お住まいの市区町村やデジタル庁・マイナポータルの案内で最新の内容をご確認ください。
(2) 試しにログインしてみる
申告期間に入ると、サイトが混み合うこともあります。年内のうちに、マイナポータルまたはe-Taxのホームページからマイナンバーカード方式でログインできるかを一度試しておくと、つまずきを早めに見つけられます。
(3) 帳簿を電子化しておく
帳簿を会計ソフトで付けていれば、青色申告決算書や収支内訳書のデータをe-Taxに連携しやすくなります。紙のノートとレシートで管理している場合は、年内に会計ソフトへ入力する流れを作っておきましょう。年末の経費の締め方は、美容室の年末の経費の締め方も参考になります。
(4) 各種の控除証明書を集める準備をする
国民年金保険料・小規模企業共済・生命保険などの控除証明書は、秋から年末にかけて届くものがあります。届いたら、サロンの書類とは別に「確定申告用」のファイルや封筒にまとめて入れておくと、申告時に探す手間が省けます。
(5) 売上・経費の資料を月別に整える
レジの売上、予約サイトの入金明細、カード決済の入金明細、材料仕入の請求書など、サロンの資料は種類が多いのが特徴です。12月末時点の締めに向けて、月別にフォルダ分けしておくと、申告書作成が格段に楽になります。
(6) 業務委託・面貸しの方は報酬の資料も忘れずに
面貸しや業務委託で働く美容師は、サロンから受け取る報酬の明細や支払い通知、面貸し料(席料)の請求書が申告の元になります。詳しくは業務委託美容師の税金完全ガイドをご覧ください。
4. こんなときは、e-Taxで困りやすい
家族のスマホ・パソコンを使いたい場合
マイナンバーカード方式では、カード本人の暗証番号の入力が必要になります。他人のカードで代わりに申告することはできないため、ご自身のカードで操作する必要があります。
マイナンバーカードを持っていない場合
国税庁の案内では、IDとパスワードを持たない人は、e-Tax(マイナンバーカード方式)か書面での提出を利用するよう案内されています。カードの申請から交付までには時間がかかることがあるため、検討している方は早めにお住まいの市区町村の案内を確認してください。
パソコンやスマホの操作が不安な場合
確定申告書等作成コーナーは、画面の案内に沿って入力していく形式です。ただし、事業所得の計算(減価償却、家事按分、消費税の区分など)は、入力方法より前に「何を経費にするか」の判断が必要になります。不安な場合は、帳簿の整理から専門家に相談するのも一つの方法です。
5. 確定申告をしないとどうなる?
「今年は忙しくて」と先送りにすると、無申告加算税や延滞税などのペナルティの対象になる可能性があります。詳しくは美容師が確定申告をしないとどうなる?で解説しています。e-Taxの準備を年内に済ませておくことは、期限内に間に合わせるための現実的な対策でもあります。
6. 申告スケジュールの目安
| 時期 | やること |
|---|---|
| 11月〜12月 | マイナンバーカード・電子証明書の確認、試しのログイン、控除証明書の保管 |
| 12月末 | 売上・経費の締め、現金・預金残高の確認 |
| 1月 | 帳簿の入力、会計ソフトでの月次整理、源泉徴収票・支払調書などの収集 |
| 2月中旬〜3月中旬 | 申告書の作成・e-Tax送信(例年は2月16日ごろ〜3月15日ごろ。令和8年分の正式な期間は、国税庁の発表でご確認ください) |
申告期限が土日祝日にあたる年は、翌開庁日が期限になる点にも注意が必要です。
まとめ
- ID・パスワード方式は新規発行が停止されており、令和9年分の確定申告からは利用できなくなる予定です(国税庁FAQ)。
- 今後のe-Taxは、マイナンバーカード方式が中心になります。
- 青色申告特別控除65万円の要件には、e-Taxでの期限内送信が関わります。
- 年内のうちに、カードの状態確認、試しのログイン、帳簿・資料の整理を済ませておくと、申告期間が楽になります。
申告のやり方や控除の適用は、事業の状況によって異なります。最終的な判断は、税務署や税理士などの専門家にご確認ください。
ご相談について
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