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【令和8年度税制改正】インボイス経過措置の見直しと美容室への影響|面貸し・業務委託費の消費税を税理士が解説

「2割特例がそろそろ終わるらしいけど、うちの店にどう関係あるの?」「面貸しの美容師さんへの支払い、消費税の計算が変わるって聞いたけど……」。令和8年度の税制改正で、インボイス制度の経過措置がまた変わります。制度が複雑で、しかも数年おきに変わるため、「結局、今年から何をどう変えればいいのか分からない」というオーナー様の声を、顧問先からもよく伺います。

特に美容室は、面貸し(シェアサロン)契約や業務委託契約でスタイリストと組んでいるケースが多く、相手がインボイス未登録の免税事業者であることも珍しくありません。この記事では、令和8年度税制改正で何がどう変わるのか、美容室経営に直結する「仕入税額控除の経過措置」を中心に、税理士の視点で整理します。

令和8年度税制改正で変わること・全体像

令和8年度税制改正法は、2026年3月31日に成立しました。インボイス制度に関しては、主に次の3点が変更されています。

  • ①「2割特例」は令和8年分(法人は令和8年9月30日を含む事業年度)で終了
  • ②終了後の激変緩和として、個人事業者限定の「3割特例」が新設
  • ③免税事業者などからの仕入れに係る「仕入税額控除の経過措置」の控除割合・期限が見直し

このうち①②は、免税事業者からインボイス発行事業者になった「売り手側」の消費税負担を軽くする制度です。一方で③は、免税事業者などから仕入れを行う「買い手側」に関わる制度で、面貸しや業務委託でスタイリストに料金を支払う美容室オーナー様にとって、実はこちらの方が影響が大きいケースが多くあります。順番に見ていきましょう。

①2割特例はいつまで?終了のタイミングを確認

2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者の消費税負担を軽くする経過措置で、納付税額を「売上に係る消費税額の2割」に抑えられる制度です。適用できる期間は、国税庁の案内によれば令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間とされています。個人事業者であれば、令和8年分(2026年分)の確定申告が最後の適用となる見込みです。

2割特例の仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

インボイス2割特例はいつまで?80%控除の経過措置との違いを美容師向けに解説

②新設された「3割特例」とは

2割特例の終了後、急に納税額が跳ね上がって困る事業者が出ないよう、令和8年度税制改正で新たに設けられたのが「3割特例」です。現時点で確認できている概要は次のとおりです。

項目 内容
対象者 個人事業者のみ(法人は対象外)
適用期間 令和9年分・令和10年分の2年間に限る予定
納税額の計算 売上に係る消費税額の3割を納付税額とする
対象となる要件 免税事業者からインボイス発行事業者になったこと等により、事業者免税点制度(売上1,000万円以下は免税という仕組み)の適用を受けられない課税期間であること

一人サロンや、フリーランスから法人化せず個人事業のまま営業を続けている美容室オーナー様であれば、この3割特例の対象になる可能性があります。ただし適用の要件や手続きの詳細は今後、国税庁から様式や案内が順次公表されていく段階です。ご自身が対象になるかどうか、実際の申告時にどの計算方法が有利かは、必ず最新の国税庁の案内で確認するか、顧問税理士にご相談ください。

③美容室に特に影響が大きい「仕入税額控除の経過措置」の見直し

ここからが、美容室経営者にとって最も注意していただきたいポイントです。①②は「売り手(免税事業者だった側)」の話でしたが、ここでの③は「買い手(免税事業者から仕入れる側)」の話、つまりオーナー様ご自身が関係する制度です。

面貸し・シェアサロンで席料を受け取っている場合や、フリーランスのスタイリストに業務委託費を支払っている場合、相手がインボイス未登録の免税事業者であれば、その支払いは「インボイスのない仕入れ」に当たります。本来、インボイスのない仕入れは消費税の仕入税額控除が受けられませんが、急な負担増を避けるための経過措置として、一定割合を控除できる仕組みが用意されています。この控除割合と期限が、今回の改正で次のように見直されました。

期間 控除できる割合
〜令和8年9月30日 80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日 70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日 50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日 30%
令和13年10月1日以降 控除不可

改正前は、令和8年10月以降いきなり50%まで下がる予定でしたが、今回の改正で70%のクッション期間が設けられ、なだらかに縮小する形に緩和されています。また、1社(1人)あたりの免税事業者からの課税仕入れの合計額が年間1億円を超える場合、その超えた部分にはこの経過措置が使えなくなる上限ルールも新設されました(改正前は10億円が基準)。個人経営の美容室でこの上限に達するケースはまずありませんが、多店舗展開されている場合は念のため確認しておくとよいでしょう。

美容室での具体的な影響イメージ

たとえば、免税事業者であるフリーランスの美容師に業務委託費として月20万円(年間240万円、消費税分を含む想定)を支払っている本則課税のサロンを例に考えます。あくまで控除割合の変化を示す簡易なイメージですが、控除できる消費税額が段階的に減っていくことで、サロン側が実質的に負担する消費税は増えていきます。控除割合が80%から70%、50%、30%と下がるにつれて、控除しきれなかった分がそのまま納税額の増加につながる点を押さえておく必要があります。

簡易課税を選択している美容室(多くは第5種事業に該当)であれば、そもそも個々の仕入れの消費税額を集計せず、みなし仕入率で計算するため、この経過措置の影響を直接受けません。簡易課税の区分については、以下の記事もあわせてご覧ください。

美容室の簡易課税は第5種|店販は第2種になる区分経理で納税額が変わる

取引先のインボイス登録状況はどこで確認できる?

面貸し・業務委託契約を結んでいるスタイリストがインボイス発行事業者かどうかは、国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」で、相手の登録番号(T+13桁の数字)を入力すれば無料で確認できます。契約時にもらった請求書や領収書に登録番号の記載があるかをまず確認し、記載がない・不明な場合は本人に確認したうえで、公表サイトで裏付けを取っておくと安心です。登録の有無は今後の控除割合にそのまま影響するため、面貸し料・業務委託費の支払先ごとに一覧表を作って管理している事務所も増えています。

よくあるご質問

Q. うちは簡易課税を選択しています。今回の改正の影響を受けますか?

A. 簡易課税は売上(受け取った消費税額)を基準にみなし仕入率で計算するため、面貸し料・業務委託費といった個々の仕入れがインボイス対応かどうかは、納税額の計算に影響しません。今回の「仕入税額控除の経過措置」の見直しは、本則課税を選択している事業者への影響が中心です。ただし、簡易課税を選択すべきかどうかの判断自体は、業種区分(美容室は原則第5種、店販は第2種)や仕入れの多い少ないによって変わるため、一度は本則課税との比較試算をしておくことをおすすめします。

Q. 2割特例を使っていましたが、令和9年分からはどうなりますか?

A. 法人化していない個人事業者で、免税点制度の対象外になる要件を満たす場合は、3割特例の対象になる可能性があります。ただし2割特例と異なり適用要件がやや限定的になる見込みのため、令和9年分の申告に向けては、本則課税・簡易課税・3割特例のいずれが有利かを、決算前の早い段階でシミュレーションしておくことをおすすめします。

Q. スタッフ(雇用契約)にも影響しますか?

A. 雇用契約に基づく給与は、そもそも消費税の課税仕入れの対象外(不課税取引)ですので、今回の経過措置の見直しによる影響はありません。影響が出るのは、外部の免税事業者(フリーランスのスタイリスト、面貸し先など)に業務委託費・席料などとして支払っている取引に限られます。

面貸し・業務委託を活用しているサロンが今から準備すべきこと

以下の4点を、遅くとも令和8年10月の控除割合切り替えまでに確認しておくことをおすすめします。

  • ①契約しているスタイリストのインボイス登録状況の確認 面貸し・業務委託の契約先ごとに、インボイス発行事業者かどうかを書面(登録番号の控えなど)で確認・保管しておきましょう。
  • ②本則課税か簡易課税か、改めて試算する 控除割合の縮小により、本則課税での納税額が今後増えていく可能性があります。簡易課税を選択した方が有利になるケースも出てくるため、決算・確定申告のタイミングで比較試算をしておくと安心です。
  • ③業務委託費・面貸し料の見直し交渉 相手がインボイス未登録であることを理由に一方的に報酬を引き下げると、独占禁止法・下請法上問題になるおそれがあります。あくまで双方の合意のもと、時間をかけて丁寧に話し合うことが重要です。
  • ④3割特例の対象になるか個人事業のオーナー自身も確認 ご自身が個人事業主として免税事業者から課税事業者になった経緯がある場合、令和9・10年分で3割特例が使えるかどうかも確認しておきましょう。

業務委託美容師の税務全般については、次の記事も参考にしてください。

業務委託美容師の税金完全ガイド|報酬から引かれるもの・経費・申告手順

また、面貸し・シェアサロンで働く美容師側の確定申告については、こちらの記事で解説しています。

面貸し・シェアサロン美容師の確定申告|面貸し料・席料の勘定科目も解説

まとめ

令和8年度税制改正により、インボイス制度は「2割特例の終了」「個人事業者向け3割特例の新設」「免税事業者からの仕入れに係る控除割合の段階的な縮小(80%→70%→50%→30%)」という3つの変化を迎えます。特に面貸し・業務委託でフリーランスの美容師と組んでいるサロンにとっては、③の控除割合の縮小が消費税の実質負担に直結するため、令和8年10月の切り替え前に、取引先のインボイス登録状況の確認と、本則課税・簡易課税の比較検討を進めておくことをおすすめします。

ここで紹介した制度の適用要件や手続き、金額の計算方法は今後、国税庁から順次詳細が公表されていく段階のものも含まれます。実際の申告にあたっては、必ず国税庁の最新の案内・様式をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

この記事の内容でご不明な点や、自店のケースに当てはめた具体的な判断が必要な場合は、美容室専門の税理士事務所フェリスにお気軽にご相談ください。

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