美容室の2店舗目出店でかかる税金と資金調達|多店舗展開の税務を解説
1店舗目が軌道に乗り、「そろそろ2店舗目を出そうか」と考え始めたサロンオーナーの方へ。多店舗展開は売上を伸ばす大きなチャンスですが、その裏側で税務の景色は1店舗時代とはっきり変わります。消費税の負担、法人化のタイミング、出店資金の融資、店舗ごとの損益管理、店長への任せ方——どれも「知らずに進めて後から慌てる」ことが多いポイントです。
この記事では、美容室の多店舗展開にともなう税務を、サロン専門の税理士の視点でわかりやすく整理します。数字が苦手な方でも読み進められるように、専門用語にはそのつど補足を入れています。2店舗目の出店を検討する前に、お金の全体像をつかんでおきましょう。
2店舗目を出すと税務はこう変わる(売上規模拡大の影響)
2店舗目を出すと、当然ながらサロン全体の売上が大きくなります。1店舗のときは気にしなくてよかった「消費税」や「法人化」のラインに、一気に近づく、あるいは超えてしまうのがこの段階の特徴です。
消費税の課税事業者になりやすくなる
個人事業の美容室では、消費税には次のような判定があります。1店舗のうちは免税(消費税を納めなくてよい状態)だった方でも、2店舗目で売上が積み上がると課税事業者(消費税を納める立場)に変わるケースが増えます。
| 判定の種類 | 内容 | 多店舗化での注意点 |
|---|---|---|
| 基準期間の判定 | 前々年の課税売上高が1,000万円超だと、その年は課税事業者になる | 2店舗合算で1,000万円を超えやすい |
| 特定期間の判定 | 前年の上半期(1〜6月)の課税売上高、または給与支払額が1,000万円超でも課税事業者になる | スタッフを増やすと給与でも超えやすい。この判定の省略は禁物 |
つまり「前々年だけ見ればまだ免税のはず」と思っていても、前年上半期の売上や給与で判定に引っかかることがあります。多店舗化を進める年は、この特定期間の判定もあわせて確認しておきましょう。消費税の納税が始まると、薬剤・カラー剤の仕入やホットペッパービューティーの掲載料にかかった消費税を差し引ける一方で、納税資金をあらかじめ準備しておく必要があります。
法人化(会社にする)を考えるラインに入る
所得(もうけ)が大きくなると、個人のままより会社にしたほうが税負担や社会的信用の面で有利になる場面が出てきます。2店舗目は、まさにこの法人化を本格的に検討するタイミングです。具体的な目安や判断基準は、法人化サポートのページでくわしく解説しています。「いくらの利益から法人化すべきか」は人それぞれの状況によって変わるため、目安として捉え、最終判断は税理士にご相談ください。
2店舗目の出店資金と融資(公庫の追加融資)
多店舗展開でつまずきやすいのが資金です。シャンプー台やセット面、内装工事、保証金、当面の運転資金——2店舗目の出店には1店舗目と同様にまとまったお金がかかります。自己資金だけでまかなうのが難しい場合、日本政策金融公庫(国の金融機関)などからの融資を検討することになります。
1店舗目の実績があると相談しやすくなる
創業時とちがい、2店舗目の融資ではすでに1店舗目を運営してきた実績を見てもらえます。一般に、次のような点が整っていると金融機関の理解を得やすくなる傾向があります。
- 1店舗目で安定した売上・利益が出ていることが、月次試算表や決算書で示せる
- 既存の借入をきちんと返済してきた履歴がある
- 2店舗目の事業計画(売上予測・採用計画・回収見込み)に根拠がある
- 店舗別に数字が把握できていて、収支の説明ができる
ただし「実績があれば必ず通る」というものではありません。審査は総合的に判断されますので、断定はできない点にご注意ください。出店資金や追加融資の準備については、開業支援・創業融資のページもあわせてご覧ください。
融資の前に「数字で語れる」状態にしておく
金融機関が知りたいのは「貸したお金がきちんと返ってくるか」です。そのため、1店舗目の損益が見える試算表や、2店舗目でどれくらいの指名売上・店販・客単価を見込むのかといった計画が重要になります。日々の記帳が後回しになりがちなオーナーほど、出店前に経理を整えておくことをおすすめします。
店舗別損益管理のすすめ(どちらの店が儲かっているか)
多店舗化で最も大切なのに見落とされがちなのが、店舗ごとの損益管理(部門別管理)です。2店舗をまとめて1つの数字で見ていると、「全体では黒字だけれど、実は2店舗目が足を引っ張っていた」といった状況に気づけません。
店舗別に売上と経費を分けて記録する
月次試算表(毎月の損益が一覧でわかる表)を、店舗ごとの「部門」に分けて作ると、どちらの店がどれだけ稼ぎ、どれだけコストがかかっているかが一目でわかります。下の表は、店舗別に見るべき代表的な項目の例です。
| 区分 | 主な項目 | 店舗別に見るとわかること |
|---|---|---|
| 売上 | 技術売上(カット・カラー・パーマ)、指名売上、店販 | どちらの店の客単価・店販比率が高いか |
| 変動費 | カラー剤・薬剤などの材料費、ディーラーからの仕入 | 材料費率が高すぎる店がないか |
| 固定費 | 家賃、人件費、ホットペッパービューティー掲載料、水道光熱費 | 集客コストや人件費が売上に見合っているか |
たとえばクロスやタオルのリース代、シャンプー台の光熱費なども、店舗ごとに分けて記録しておくと、コスト構造の違いが見えてきます。店舗別の数字がそろっていれば、「2店舗目はあと何人客数を増やせば黒字化するか」「材料費率を下げる余地があるのはどちらか」といった経営判断がしやすくなります。
こうした部門別の記帳は手間がかかりますが、レシートを送るだけで経理を任せられる仕組みを使えば、オーナーは現場に集中できます。記帳の負担を減らしたい方は記帳代行・経理代行もご検討ください。
店長への任せ方と税務(雇用とのれん分けの違い)
2店舗目を出すと、オーナーが両店を毎日見ることは物理的に難しくなります。そこで2店舗目を任せる「店長」をどう位置づけるかが、税務上の大きな分かれ道になります。大きく分けて雇用する(従業員として給与を払う)か、のれん分けのように独立した立場に業務委託するかの2つです。
雇用店長の場合(給与として源泉徴収)
店長を従業員として雇う場合、支払うのは給与です。給与には所得税の源泉徴収(あらかじめ天引きして納める仕組み)が必要で、社会保険の対象にもなり得ます。店長に成果に応じた報酬を出したい場合は、固定給に役職手当やインセンティブを組み合わせるなど、給与設計を整理しておくとよいでしょう。
のれん分け・業務委託にする場合の注意点
「店長に2店舗目を任せ、報酬を外注費(業務委託費)として払いたい」という相談はよくあります。外注費にすれば源泉徴収や社会保険の手間が省けると考えがちですが、ここには大きな落とし穴があります。契約書の名目が業務委託でも、働き方の実態が「雇用」だと判断されれば、税務上は給与として扱われます。
たとえば、出退勤の時間が決められている、業務の指示・命令を受けている、道具や材料を店側が用意しているといった事情があると、雇用とみなされやすくなります。給与と認定されると、過去にさかのぼって源泉所得税の納付や消費税の取り扱いの見直しを求められることがあり、影響は小さくありません。外注費と給与の線引きについては論点が多いため、店長への任せ方を決める前に税理士へご相談いただくのが安全です。
多店舗化と法人化の関係(均等割・事業税の増え方)
多店舗展開が進むと、法人化(会社設立)が視野に入ってきます。会社にすると、利益が出ていない年でも一定の税負担が発生する点を押さえておきましょう。
- 法人住民税の均等割:会社は赤字でも、年間およそ7万円〜の均等割という税金がかかります。
- 個人事業税:美容業は第3種事業として税率5%です。事業主控除が年290万円あるため、もうけがこの範囲なら個人事業税はかかりませんが、多店舗化で所得が増えると負担が出てきます。
「どれくらいの規模・利益になったら会社にするのが妥当か」は、社会保険料や役員報酬の設計まで含めた総合判断になります。多店舗化と法人化はセットで考えるテーマですので、法人化サポートのページで仕組みを確認したうえで、ご自身の数字に当てはめた検討は税理士にお任せください。最新の制度は改正されることがあるため、判断に迷う場合は最新情報を国税庁サイトや税理士にご確認ください。(※2026年6月時点)
当事務所の多店舗展開サポート
美容室専門税理士事務所フェリスでは、記帳代行から確定申告まで月額19,800円(税込)のプランでサポートしています。レシートを郵送またはLINEで送るだけで、月次試算表の作成や年1回の確定申告(個人の青色申告)、消費税申告までプラン内で完結します。税務・経営のご相談も電話・メール・LINEで受け付けています。
多店舗化で必要になる店舗別(部門別)の損益管理や、法人決算・給与計算といった業務はプランのオプション(別料金)となります。2店舗目以降の顧問料の取り扱いについては、料金プランのページの内容に沿って、お見積もり時に正直にご説明します。「2店舗目を出すと費用はどう変わるのか」も、無料相談の段階で遠慮なくお尋ねください。
2店舗目の出店計画は、早めの事前相談を
多店舗展開は、消費税・法人化・融資・店長の処遇が一度に絡み合う、サロン経営の大きな転換点です。出店してから「税金が想定外だった」「店長を外注扱いにしていたが給与だと指摘された」と気づくより、計画段階で全体像を整理しておくほうが、結果的に手元に残るお金が変わってきます。
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