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美容室の簡易課税は第5種|店販は第2種になる区分経理で納税額が変わる

消費税の申告方法には「原則課税」と「簡易課税」の2つがあり、簡易課税を選ぶと事業の種類ごとに決められた「みなし仕入率」で納税額を計算します。ところが美容室には見落としやすい落とし穴があります。それは、カット・カラーなどの施術売上と、シャンプーやトリートメントといった店販売上とで「事業区分」が異なるという点です。

「うちは美容室だから1つの区分でいいだろう」——そう思って売上を区分せずに申告すると、本来より高い消費税を納めることになりかねません。逆に、レジ・帳簿で売上を分けて記帳しておけば、適正な区分経理によって納税額が変わります。これは特別な「節税術」ではなく、制度どおりに正しく処理した結果です。

この記事では、美容室専門税理士事務所フェリスが、美容室の簡易課税における事業区分(施術は第5種・店販は第2種)と、売上を区分経理するかどうかで納税額がどう変わるのかを計算例つきで解説します。原則課税との有利判定、届出の期限、レジ・POSでの分け方まで、サロンの現場に即してまとめました。

1. 簡易課税制度のおさらい(みなし仕入率・選択できる条件)

簡易課税制度とは、実際に支払った経費の消費税を細かく集計しなくても、売上にかかった消費税に「みなし仕入率」を掛けるだけで納税額を計算できる、事務負担の軽い計算方法です。薬剤やカラー剤の仕入、ディーラーへの支払い、ホットペッパービューティーの掲載料など、一つひとつの消費税を集計する手間が省けます。

簡易課税では、消費税の納税額をおおまかに次のように計算します。

  • 納める消費税 = 売上にかかった消費税 ×(1 − みなし仕入率)

みなし仕入率は事業の種類(第1種〜第6種)ごとに決まっており、率が高いほど差し引ける額が大きく、納税額は小さくなります。

事業区分 みなし仕入率 主な事業の例
第1種(卸売業) 90% 仕入れた商品を他の事業者へ販売
第2種(小売業) 80% 仕入れた商品を消費者へ販売(店販など)
第3種(製造業等) 70% 製造・建設など
第4種(その他) 60% 飲食店業など
第5種(サービス業等) 50% 美容・理容などのサービス提供
第6種(不動産業) 40% 不動産の貸付け等

簡易課税を選べるのは、次の2つの条件を満たす場合です。

  • 基準期間(個人事業主は前々年)の課税売上高が5,000万円以下であること
  • 適用を受けたい課税期間が始まる前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署へ提出していること

そもそも消費税の申告が必要になるのは、原則として基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超える場合です。なお、前々年が1,000万円以下でも、特定期間(前年の上半期)の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超えると、その年は課税事業者になります。インボイス登録をしている場合は売上規模にかかわらず課税事業者です。

2. 美容室の施術売上は第5種(みなし仕入率50%)

カット、カラー、パーマ、トリートメント施術、ヘッドスパ、縮毛矯正——こうした技術・サービスの提供による売上は「第5種事業(サービス業等)」に区分され、みなし仕入率は50%です。美容業はサービス業に分類されるため、施術売上の大半がこの第5種にあたります。

みなし仕入率50%とは、売上にかかった消費税の半分を差し引いて納税する計算です。たとえば施術売上にかかった消費税が100万円なら、50万円を差し引いた残り50万円が納税の目安です。

指名料やオプションメニューといった技術に付随する売上も、施術と一体のサービス提供として第5種で考えるのが一般的です。一方、店販(商品の販売)は同じ「美容室の売上」でも区分が異なります。ここが区分経理のキモです。

3. シャンプー等の店販売上は第2種(みなし仕入率80%)

サロンで仕入れたシャンプー、トリートメント、スタイリング剤、ヘアオイルなどをお客様にそのまま販売する「店販」は、施術とは別に「第2種事業(小売業)」に区分されます。みなし仕入率は80%です。

ポイントは、施術(第5種・50%)より店販(第2種・80%)のほうがみなし仕入率が高い、つまり同じ売上額でも店販のほうが差し引ける額が大きく、納税額が小さくなることです。仕入れた商品を手を加えずそのまま販売する形態は、小売業(第2種)にあたると考えられます。

区分経理の要件 — 売上を分けて記録する

第5種と第2種の率を別々に適用するには、施術売上と店販売上を帳簿などで区分して記録(区分経理)しておくことが前提です。レジや会計ソフトで「技術売上」「店販売上」を分けて集計し、それぞれの課税売上高がわかる状態にしておく必要があります。

区分しないとどうなるか — 低い方の率が全体に適用される

ここが最大の注意点です。複数の事業区分の売上があるのに区分経理をしていない場合、そのうち最も低いみなし仕入率を売上全体に適用しなければならないというルールがあります。

美容室は施術(第5種・50%)と店販(第2種・80%)が混在します。区分していないと、低い方の第5種50%が店販部分にも適用され、本来80%で計算できた店販も50%でしか差し引けなくなり、納税額が本来より大きくなります。「分けて記帳する」というひと手間を省いただけで損をする、という構図です。

売上の種類 事業区分 みなし仕入率 区分しないと…
カット・カラー等の施術 第5種 50% 50%(変わらず)
シャンプー等の店販 第2種 80% 50%が適用され不利に

4. 区分経理した場合・しない場合の納税額比較(計算例)

区分経理の有無で納税額がどれだけ変わるのか、モデルケースで見てみましょう。あくまで仕組みを理解するための簡略化した試算であり、実際の金額は端数処理や控除の細目によって変わります。

前提(年間・すべて税率10%として簡略化)

  • 施術売上(第5種):年 2,000万円 → 消費税 200万円
  • 店販売上(第2種):年 500万円 → 消費税 50万円
  • 売上にかかった消費税の合計:250万円

ケースA:きちんと区分経理した場合

  • 施術:200万円 ×(1 − 50%)= 100万円
  • 店販:50万円 ×(1 − 80%)= 10万円
  • 納める消費税の目安:合計 110万円

ケースB:区分しなかった場合(低い方の50%を全体に適用)

  • 合計250万円 ×(1 − 50%)= 納める消費税の目安:125万円
項目 ケースA:区分経理あり ケースB:区分なし
施術(第5種)の控除 100万円
店販(第2種)の控除 10万円
全体に50%適用 125万円差引
納税額の目安 110万円 125万円
差額 約15万円(区分経理しないと不利)

店販の売上規模が大きいサロンほど、区分経理の有無による差は広がります。これは裏ワザではなく、制度どおりに売上を正しく区分した結果として生じる差です。日々の記帳で施術と店販を分けておくことが大切です。

5. 原則課税と簡易課税どちらが有利か(大型設備投資の年の注意)

簡易課税が有利か、実際の経費から計算する原則課税が有利かは、その年の経費の状況によって変わります。「簡易課税 原則課税 どっち」と迷う美容室オーナーは多いのですが、特に注意したいのが大きな設備投資や内装工事のある年です。

原則課税では、支払った経費にかかった消費税を実額で差し引けます。開業や移転・リニューアルで、内装工事やシャンプー台・セット面・チェアなどの什器、大型のスチーマーやデジタルパーマ機を一度に購入した年は、支払った消費税が大きくなり、原則課税のほうが有利(場合によっては還付)になることがあります。

状況 有利になりやすい方法 理由
経費が少なく利益率が高い通常の年 簡易課税 みなし仕入率で多めに差し引ける場合がある
開業・移転・内装リニューアルの年 原則課税 設備投資の消費税を実額で差し引ける/還付の可能性
高額な店販仕入が多く在庫を抱える 要試算 実額とみなし率の比較が必要

ただし簡易課税は一度選ぶと最低2年間は継続が必要なため(次章で解説)、自由に切り替えることはできません。設備投資の計画がある場合は、その年が簡易課税の縛り期間に重なっていないかを事前に確認することが大切です。判断が難しいケースが多いため、最新情報は国税庁サイトや税理士にご確認ください。

6. 簡易課税の選択届出の期限と2年継続縛り

簡易課税を使うには、適用を受けたい課税期間が始まる前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署へ提出する必要があります。個人事業主が令和8年(2026年)分から使いたいなら、原則として令和7年(2025年)12月31日までに提出します。後から遡って選ぶことはできませんので、判断は前もって行う必要があります。

もう一つの重要ルールが2年継続縛りです。簡易課税を選択すると、原則として2年間は原則課税に戻すことができません。設備投資で原則課税のほうが有利な年が来ても、縛り期間中は切り替えられません。やめる場合は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しますが、こちらも提出時期に決まりがあります。

なお、インボイス制度に関連する2割特例(売上にかかった消費税の2割を納めればよい負担軽減措置)は、経過措置とは終了時期が異なります。2割特例は「令和8年9月30日を含む課税期間」まで適用でき、個人事業者は令和8年(2026年)分全体で適用が可能です。仕入税額控除の経過措置(80%控除は2026年9月末まで、その後2029年9月末まで50%)とは時期が違うため、混同しないよう注意してください。どれを選ぶかは年ごとに状況が変わるため、毎年の判定が欠かせません。

7. レジ・POSで施術と店販を分ける実務(記帳の現場手順)

区分経理は難しい会計知識ではなく、日々のレジ・記帳のひと工夫で実現できます。現場で実践しやすい手順を整理します。

  1. POS・レジで部門を分ける:「技術売上」と「店販売上」のボタン・カテゴリを分けて登録し、会計時にどちらかを選ぶ運用にします。多くのサロン用POSは部門集計に対応しています。
  2. 日計表・月次で区分集計:1日の締めや月次で技術売上と店販売上が別々に集計される状態にしておきます。これがそのまま区分経理の根拠資料になります。
  3. 仕入も連動させる:店販用に仕入れた商品と、施術で使う薬剤・カラー剤(消費する材料)を分けて把握しておくと、原則課税との比較もしやすくなります。
  4. 会計ソフトへ区分入力:記帳の際に売上を区分のまま入力し、消費税の集計時に第5種・第2種が分かれるようにします。

「レジ締めの数字を分けるだけ」とはいえ、毎月続けるとなると本業の合間では負担になりがちです。記帳をプロに任せたい場合は、記帳代行・経理代行の活用も選択肢です。フェリスではレシートを郵送、またはLINEで撮影して送るだけで記帳が完結するため、区分経理の集計もまとめてお任せいただけます。

8. 有利判定のシミュレーションは顧問プランで毎年実施

美容室の消費税は「施術は第5種・店販は第2種」という区分経理、そして「簡易課税か原則課税か」「2割特例が使えるか」の組み合わせで納める額が変わります。しかも設備投資の予定や売上規模によって毎年最適な答えが変わるため、一度決めたら終わりではありません。届出には期限と2年縛りがあるので、後手に回らないよう事前の試算が重要です。

こうした有利判定は、数字に強いプロと一緒に進めるのが安心です。フェリスの顧問プランでは、毎年の状況に合わせて区分経理の整備から消費税の計算方法の選択まで、サロンの実態に即してサポートします。確定申告の進め方は確定申告サポートもご参照ください。なお、本記事の制度内容は2026年6月時点のものです。改正により取扱いが変わる場合があるため、具体的な判断は税理士にご相談ください。

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