美容室オーナーの予定納税はいつ・いくら払う?11月の第2期と減額申請の手続きを解説
「7月に予定納税を払ったばかりなのに、また11月に同じ額を払うの?」——夏の繁忙期を終えたこの時期、そんなため息をこぼす美容室オーナーは少なくありません。しかも今年は薬剤やカラー剤の仕入単価が上がり、スタッフの募集にもお金がかかった。去年の売上をベースに計算された税額を、利益が伸び悩む今年に払わされる感覚は、正直つらいものです。
でも、予定納税は「通知が来たら黙って払うしかないもの」ではありません。今年の利益が去年より落ちる見込みなら、税額を減らす正式な手続きが用意されています。この記事では、美容室・サロン経営に即して予定納税の仕組みと、11月に使える減額申請の手順を整理します。
予定納税とは?なぜ7月と11月の2回、納税通知が届くのか
予定納税とは、その年の所得税の一部を、確定申告を待たずに前払いする制度です。前年の実績をもとに税務署が金額を計算し、あらかじめ通知してきます。
対象は「予定納税基準額が15万円以上」の人
国税庁の説明では、予定納税基準額が15万円以上になる人が予定納税の対象です。予定納税基準額は原則として、その年の5月15日現在で確定している前年分の申告納税額がそのまま使われます。つまり「去年の確定申告で納めた所得税の額」がベースです。
対象になる人には、税務署からその年の6月15日までに書面またはe-Taxで通知が届きます。自分で計算して申し出る必要はなく、通知が来た時点で納付義務が発生している、という点がまず押さえどころです。
納付は年2回、それぞれ基準額の3分の1
| 区分 | 納付する金額 | 納付期間(2026年) |
|---|---|---|
| 第1期分 | 予定納税基準額の3分の1 | 7月1日〜7月31日 |
| 第2期分 | 予定納税基準額の3分の1 | 11月1日〜11月30日 |
| 確定申告 | 年間の税額から予定納税額を差し引いた残り | 翌年2月16日〜3月15日 |
予定納税で払った分は、翌年の確定申告で年間の所得税額から差し引かれます。納めすぎていれば還付されるので、「二重に取られる」わけではありません。ただし還付は翌年の春。それまでの数か月間、資金が税務署に預けっぱなしになるのが実務上の痛みです。
美容室オーナーが予定納税でつまずきやすい3つの理由
同じ予定納税でも、サロン経営には特に効きやすい事情があります。
理由1:秋は税金と社会保険料の「重なる季節」
11月の予定納税は、単独でやってくるわけではありません。個人事業主のオーナーの場合、下半期は納付が集中します。
- 住民税(普通徴収)の分割納付
- 個人事業税(多くの自治体で8月・11月の2回)
- 国民健康保険料の毎月の納付
- 消費税の中間納付(該当者のみ)
- 所得税の予定納税 第2期分
美容業は個人事業税の課税対象業種にあたり、こちらも11月に納期が来ます。詳しくは美容師・美容室の個人事業税はいくら?第3種事業・税率5%の計算と免除ラインで解説しています。11月に何が重なるのかを先に一覧化しておくだけでも、資金ショートの予防になります。
理由2:業務委託・面貸しの報酬は源泉徴収されない
フリーランス美容師として業務委託で働いている場合、サロンから受け取る報酬は源泉徴収されないケースが一般的です。会社員のように毎月少しずつ天引きされていないため、所得税は「予定納税」と「確定申告」でまとまって出ていきます。この構造を知らないと、通知書を見て初めて金額に驚くことになります。仕組みは業務委託美容師の報酬が源泉徴収されないのはなぜ?仕組みと注意点を解説で詳しく触れています。
理由3:前年が「良かった年」だと今年の負担が重くなる
予定納税は前年の実績だけで決まります。たとえば前年に指名がよく回って売上が伸びた、店販が好調だった、あるいは一時的に業務委託スタッフの稼働が高かった——そうした「良かった年」の税額が、そのまま今年の前払い額になります。今年に入って以下のような変化があっても、通知額は自動では下がりません。
- スタイリストが退職し、席が埋まらなくなった
- 薬剤・カラー剤・シャンプー剤の仕入単価が上がり、材料費率が悪化した
- シャンプー台やスタイリングチェアを入れ替え、減価償却費や修繕費が増えた
- 店舗を移転・改装し、工事費や休業期間の売上減が発生した
- 集客サイトの掲載プランを上げて広告費が膨らんだ
- 産休・育休や体調不良で、オーナー自身の施術本数が減った
今年の利益が落ちる見込みなら「減額申請」を検討する
こうしたケースのために用意されているのが、予定納税額の減額申請です。廃業・休業、業況不振などにより、その年の申告納税見積額が予定納税基準額より少なくなると見込まれる場合に、税務署へ減額を求める手続きです。
第2期分のみの申請は11月1日から11月15日まで
| 申請の種類 | 判定の基準日 | 提出期間 |
|---|---|---|
| 第1期分・第2期分の減額申請 | その年6月30日の現況 | 7月1日〜7月15日 |
| 第2期分のみの減額申請 | その年10月31日の現況 | 11月1日〜11月15日 |
ポイントは、7月の期限を逃していても第2期分だけなら11月に申請できることです。2026年は11月15日が日曜日にあたるため、期限は翌開庁日(11月16日)となる見込みです。提出期限が土日祝の場合は翌営業日が期限になりますが、直前は税務署も混み合うため、10月末の試算表が固まった時点で動き出すのが安全です。
準備する書類
- 予定納税額の減額申請書(国税庁の様式。e-Taxでも提出可能)
- 申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類。業況不振が理由なら、10月末までの損益計算書や試算表が代表的です
- 根拠資料。売上台帳、材料仕入の請求書、リース契約書、内装工事の見積書・契約書など、減少や費用増を裏づけるもの
申請すれば必ず認められるわけではありません。税務署が内容を審査し、認められた場合は納付額の変更通知書が届きます。逆に言えば、「なんとなく苦しい」ではなく「1〜10月の実績と11〜12月の見込みを積み上げると年間利益はここまで下がる」と数字で示せるかどうかが分かれ目です。日々の記帳が10月末時点で追いついているサロンほど、この手続きは通しやすくなります。
減額申請をしない/できない場合の資金繰り策
今年も前年並みの利益が出ている場合、減額申請は使えません。その前提で、負担の波を平準化する手段を用意しておきましょう。
- 振替納税の利用:口座振替にしておけば納付忘れによる延滞税を防げます。振替日は納期限より後になるため、資金手当ての時間も少し稼げます
- 納税用の別口座で毎月積み立てる:予定納税額の6分の1を毎月移しておけば、7月・11月に慌てません。日商の一定割合を機械的に振り替えるルールにすると続きます
- 納付方法を選ぶ:e-Tax(ダイレクト納付)、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付などが使えます。カード納付には決済手数料がかかる点、金額に上限がある点は事前に確認してください
- 払えないときは放置しない:期限を過ぎると延滞税が発生します。資金が足りないと分かった時点で税務署に相談すれば、猶予制度の対象になる場合があります
あわせて確認:消費税の中間申告(8月末期限)
インボイス登録をして課税事業者になったサロンでは、消費税の中間申告・納付も発生します。直前の課税期間の確定消費税額(国税分)に応じて回数が決まります。
| 直前の課税期間の確定消費税額(国税分) | 中間申告の回数 |
|---|---|
| 48万円以下 | 原則不要(任意の中間申告制度あり) |
| 48万円超〜400万円以下 | 年1回 |
| 400万円超〜4,800万円以下 | 年3回 |
| 4,800万円超 | 年11回 |
個人事業者で年1回に該当する場合、1月〜6月分の中間申告・納付期限は8月31日です。2026年は8月31日が月曜日にあたります。「所得税の予定納税は7月に済んだ」と安心していると、8月末に消費税の中間納付が来て資金計画が崩れる、というのはよくあるパターンです。自店が課税事業者かどうかの判定は美容室の売上が1000万円を超えたら?消費税の課税事業者判定と特定期間もあわせてご確認ください。
なお、2026年分の所得税については基礎控除や給与所得控除の見直しが進んでいます。減額申請で提出する申告納税見積額を計算する際は、最新の様式と国税庁の案内で控除額を確認してから積み上げてください。
まとめ
- 予定納税の対象は予定納税基準額が15万円以上の人。通知は6月15日までに届き、第1期は7月1日〜7月31日、第2期は11月1日〜11月30日に、それぞれ基準額の3分の1を納付する
- 予定納税額は前年の実績で決まる。スタッフの退職、材料費の上昇、設備投資、移転・改装などで今年の利益が落ちる見込みなら、減額申請を検討する余地がある
- 第2期分のみの減額申請は11月1日〜11月15日(2026年は11月15日が日曜のため翌開庁日)。10月31日の現況で判定するため、10月末の試算表を早めに固めておくことが前提になる
- 申請には損益計算書や試算表など、数字の裏づけが必要。認められるかどうかは税務署の審査による
- 減額申請を使えない場合は、振替納税・毎月の積立・納付方法の選択で負担の波をならす
- 課税事業者は消費税の中間申告も並行して発生する。個人事業者で年1回に該当する場合の期限は8月31日
予定納税は「利益が出ている証拠」でもありますが、季節変動の大きいサロン経営では資金繰りを直撃します。減額申請を使うべきか、それとも納税資金の積立ルールを整えるべきかは、10月末までの数字を見て判断するのが確実です。
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