LINE無料相談

お問い合わせ

072-200-3579

受付時間:月〜金 9:00〜17:00

美容室の有給休暇「年5日取得義務」対応|年末年始休業を使った計画的付与を税理士が解説

「スタッフの有給休暇、ちゃんと年5日取れているだろうか」——シフト制で回している美容室では、こうした不安を抱えているオーナーが少なくありません。指名のあるスタイリストほど休みを取りづらく、アシスタントは出勤率のカウントが複雑で、気づけば基準日から1年が経っていた、というケースもよくあります。

年末年始は多くのサロンで数日間の休業日を設けるタイミングでもあり、この休業日をどう有給休暇と絡めるかで、年5日取得義務への対応がぐっと楽になることがあります。逆に言えば、9〜10月の今のうちに準備を始めておかないと、12月に入ってから「あと3日取得させないと期限に間に合わない」といった駆け込み対応になりかねません。この記事では、美容室特有の事情を踏まえながら、年次有給休暇の年5日取得義務の基本と、今からできる実務対応を整理します。

年次有給休暇の「年5日取得義務」とは

労働基準法では、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、使用者が年5日について時季を指定するなどして確実に取得させることが義務付けられています。対象は正社員に限らず、条件を満たせばパート・アルバイトのスタッフも含まれます。

付与の基本要件

年次有給休暇は、次の2つの要件を満たした労働者に発生します。

  • 雇入れの日から6か月間継続して勤務していること
  • その期間の全労働日の8割以上出勤していること

この要件を満たすと、継続勤務年数に応じて次のように有給休暇が付与されます(週の所定労働日数が通常の労働者と同程度の場合)。

継続勤務年数 付与日数
6か月 10日
1年6か月 11日
2年6か月 12日
3年6か月 14日
4年6か月 16日
5年6か月 18日
6年6か月以上 20日

この表で付与日数が10日以上となる年(6か月経過後すべての年)の労働者が、年5日取得義務の対象になります。

違反した場合の罰則

年5日の取得をさせなかった場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金の対象となり得ます。「知らなかった」「本人が休みたがらなかった」という理由は通用せず、休みを取らせる仕組みを作ることは使用者側の義務です。まずは自店の対象スタッフを洗い出し、基準日(有給休暇が発生した日)から1年以内にどれだけ消化できているかを確認することが出発点になります。

美容室ならではの難しさ

美容室で年5日取得義務への対応が悩ましくなりやすいのには、いくつか業界特有の理由があります。

  • 指名担当制:人気スタイリストほど予約が詰まり、本人も「休むと売上・指名料が減る」と感じて休暇取得に消極的になりがちです。歩合給スタッフの給与計算については冬季賞与や歩合給スタッフの計算実務もあわせて確認しておくと、休暇取得による給与への影響を説明しやすくなります。
  • シフト制・変形労働時間制:曜日ごとに出勤日が異なるスタッフが多く、基準日や出勤率の管理が煩雑になりやすい構造です。
  • アシスタントの出勤率カウント:研修や早朝出勤、遅番などが多く、労働日・欠勤日の線引きが曖昧になりやすい面があります。
  • 面貸し・業務委託スタッフとの区別:業務委託契約の美容師は労働者ではないため、原則として有給休暇の対象外です。雇用契約のスタッフと業務委託のスタッフが混在するサロンでは、対象者の切り分けを誤らないようにする必要があります。
  • 中途採用が多く基準日がバラバラになりやすい:美容業界は転職・独立の動きが活発で、入社時期が一人ひとり異なるサロンが大半です。基準日を個人ごとに管理していると、担当者の負担が大きくなり、うっかり期限管理を見落とすリスクも高まります。

特に基準日がバラバラになりやすい点への対策として、就業規則で入社時期にかかわらず基準日を「4月1日」「10月1日」などに統一する「基準日の斉一的取扱い」を採用しているサロンもあります。この場合、入社1年目は法定より前倒しで有給休暇を付与することになるため、あらかじめ就業規則にルールを明記し、繰上げ付与を行う必要があります。

パート・アルバイトスタッフの「比例付与」

週の所定労働日数が少ないパート・アルバイトスタッフ(週所定労働時間30時間未満の場合)には、労働日数に応じて少ない日数の有給休暇が付与される「比例付与」という仕組みが適用されます。

週の所定労働日数 6か月勤続時の付与日数 勤続6年6か月以上の上限日数
4日 7日 15日
3日 5日 11日
2日 3日 7日
1日 1日 3日

比例付与の場合、付与日数が10日未満であれば年5日取得義務の対象外です。ネイリストやまつエクスタッフなどで週2〜3日勤務のパートが多いサロンでは、誰が義務の対象で誰が対象外かを一人ひとり確認しておくと、あとから慌てずに済みます。なお、パートスタッフの働き方を検討する際は、「106万円の壁」廃止に伴う社会保険の変更点もあわせて把握しておくと、シフト調整の判断がしやすくなります。

年末年始の休業日を使った「計画的付与制度」

年5日取得義務への対応として実務上よく使われるのが、就業規則に定めた上で労使協定を締結して行う「年次有給休暇の計画的付与制度」です。あらかじめ会社側が指定した日に有給休暇を取得してもらう仕組みで、本人の希望を待たずに計画的に消化を進められるのが特徴です。

ただし、計画的付与の対象にできるのは、各労働者が自由に時季を選べる5日を除いた残りの日数までです。全員がすべて自由取得できる日数を最低5日残す必要がある点には注意してください。

美容室での典型的な活用例としては、次のようなものがあります。

  • 年末年始の店休日(大晦日〜三が日など)の一部を、計画的付与の対象日として設定する
  • 定休日と組み合わせて連休をつくり、その一部を有給休暇にあてる
  • 閑散期(平日の特定曜日など)を狙って交代で計画的付与を行う

年末年始の休業予定は9〜10月頃にはおおよそ固まっているサロンが多いはずです。このタイミングで「誰が」「あと何日」有給休暇の取得が必要かを棚卸ししておくと、年末の繁忙期に慌てて時季指定するよりもスムーズに進められます。

半日単位・時間単位の有給休暇という選択肢

「1日まるごと休むと予約に穴が空いてしまう」という悩みが強いサロンでは、半日単位年休や時間単位年休の導入を検討する余地もあります。半日単位年休は労使協定がなくても導入できますが、時間単位年休は労使協定の締結と、年5日を上限とする範囲内での運用が必要です。なお、年5日取得義務のカウントに使えるのは原則として1日単位・半日単位で取得した日数までで、時間単位年休は取得義務の充足には含められない点に注意が必要です。午前・午後で担当を分けやすい美容室では、半日単位年休の活用が現実的な選択肢になることがあります。

有給休暇管理簿の作成・保存

年5日取得義務の対象となる労働者については、基準日・取得日数・取得時季を記載した「年次有給休暇管理簿」を作成し、当該期間中および期間満了後3年間保存することが義務付けられています。シフト表や給与計算ソフトと連動させて管理しているサロンもありますが、紙のシフト表だけで運用している場合は、別途管理簿を用意しておく必要があります。社会保険料の定時決定など9月から変わる手続きと合わせて、労務まわりの書類を年に一度棚卸しする機会にするとよいでしょう。

有給休暇を取りやすいサロンにするための工夫

制度を整えるだけでなく、現場で実際に休暇を取りやすい雰囲気をつくることも欠かせません。次のような取り組みは、多くのサロンで実践されています。

  • 予約が集中しやすいスタイリストの休暇予定を早めにサイト・SNSやカウンセリング時に告知し、代替担当への引き継ぎをスムーズにする
  • 指名客への引き継ぎメモ(施術履歴・好みの薬剤・会話の内容など)を共有し、担当以外でも一定水準の対応ができる体制を整える
  • 繁忙期と閑散期でシフトの人員配置を変え、閑散期に有給休暇が集中して取得できるよう調整する
  • オーナー自身が率先して有給休暇を取得し、「休むこと」がマイナス評価にならない空気をつくる

人手不足が深刻な美容業界では、有給休暇の取得しやすさが採用や定着率にも影響します。年5日取得義務への対応は、単なる法令順守にとどまらず、スタッフが長く働き続けられる職場づくりの一環として位置づけるとよいでしょう。

今からできる秋のチェックリスト

確認事項 ポイント
対象者の洗い出し 雇用契約のスタッフのうち、年10日以上の有給休暇が付与されている人を確認
基準日ごとの残日数 基準日から1年以内にあと何日取得が必要かを一覧化
年末年始休業との連動 店休日の一部を計画的付与に充てられないか検討
労使協定の有無 計画的付与を行うなら就業規則の定めと労使協定の締結を確認
管理簿の整備 年次有給休暇管理簿を作成・保存できているか確認

まとめ

年次有給休暇の年5日取得義務は、業種を問わずすべての事業主に課される義務ですが、指名担当制やシフト制で回る美容室では、他業種以上に「休みを取らせる仕組み」を意識的に作る必要があります。年末年始の休業日は、計画的付与を活用してスタッフの有給消化を進める好機です。9〜10月のうちに対象スタッフと残日数を棚卸しし、年末に向けたスケジュールに組み込んでおくことをおすすめします。

なお、有給休暇の対象者判定や計画的付与の労使協定の内容は、就業規則や個々の雇用契約の実態によって判断が分かれる部分もあります。制度の細部は最新の労働基準法・厚生労働省の案内で確認しつつ、労務面の詳細は社会保険労務士、給与計算や年末調整との関係については税理士など、専門家と連携して進めるようにしましょう。

この記事の内容でご不明な点や、自店のケースに当てはめた具体的な判断が必要な場合は、美容室専門の税理士事務所フェリスにお気軽にご相談ください。

▶ LINEで無料相談:https://page.line.me/521fhuau

▶ お問い合わせフォーム:https://salon-tax.com/contact/

▶ お電話:072-200-3579

新着お知らせ