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美容室の少額減価償却資産の特例|30万円→40万円に拡大される設備投資の節税ルールを税理士が解説

「スタイリングチェアがそろそろガタついてきた」「シャンプー台を入れ替えたいけれど、今買うと税金の計算がどうなるのか分からない」——設備の古さが気になっていても、購入した年の税金への影響が読めないと、なかなか決断できないという美容室オーナーは多いのではないでしょうか。

実は、一定の条件を満たす少額の設備であれば、購入した年に取得価額の全額を経費にできる「少額減価償却資産の特例」という制度があります。しかもこの特例は、令和8年度税制改正によって対象となる金額の上限が引き上げられ、美容室にとって使い勝手が広がる見込みです。この記事では、制度の基本的な仕組みと変更点、美容室での活用の考え方を税理士の視点で解説します。

少額減価償却資産の特例とは

本来、シャンプー台やスタイリングチェアのような比較的高額な設備を購入した場合、その代金は「減価償却」というルールに従って、法律で定められた耐用年数にわたって少しずつ経費(償却費)にしていくのが原則です。何年もかけて少しずつしか経費にできないため、購入した年の税負担は思ったより軽くならないことがあります。

これに対して「少額減価償却資産の特例」は、一定の条件を満たす青色申告者が対象資産を取得した場合に、耐用年数による分割計算を行わずに、購入した年に取得価額の全額をその年の必要経費(法人の場合は損金)に計上できる制度です。年末や年度末に近づいてから設備投資を検討する美容室オーナーにとって、当年の利益と税負担を調整しやすくなる代表的な節税策のひとつです。

対象になる条件

  • 青色申告書を提出していること(白色申告では利用できません)
  • 常時使用する従業員数が一定数以下の中小事業者・中小企業者等であること(ほとんどの美容室・サロンはこの規模の範囲内に収まります)
  • 対象資産の取得価額が、定められた金額未満であること
  • その年(事業年度)の対象資産の取得価額の合計額が、年間の上限額以内であること

2026年4月から上限額が拡大されます

これまで少額減価償却資産の特例の対象は「取得価額30万円未満」の資産でしたが、令和8年度税制改正により、対象となる取得価額の上限が「40万円未満」に引き上げられることになりました。適用は2026年(令和8年)4月1日以後に取得等をした資産からとされており、同じ年の中でも、4月1日より前に取得した資産は従来どおり30万円未満が基準、4月1日以後に取得した資産は40万円未満が基準となる点に注意が必要です。

年間の上限額(合計300万円まで)については、今回の改正では変更されていません。また、適用期限もあわせて延長され、2029年(令和11年)3月31日までの取得等が対象とされる見込みです。

ここで挙げた金額や期限は、記事作成時点で報じられている改正内容にもとづくものです。実際に適用する際は、取得のタイミングや細かな要件によって判断が分かれることがあるため、国税庁の最新の案内や税理士への確認を必ず行ってください。

なぜ上限額が引き上げられるのか

今回の見直しは、中小企業・個人事業者の設備投資を後押しする政策的な狙いがあるとされています。近年は人件費や材料費だけでなく、内装工事費や器具・備品の価格も上昇しており、これまでの「30万円未満」という基準では、実質的に対象となる設備が限られてきていました。上限額を引き上げることで、価格が上がった小型の設備でも即時償却の対象にしやすくする趣旨と考えられます。美容室業界でも、椅子やドライヤーなどの器具の価格帯が上がっている実感があるオーナーは少なくないはずで、こうした背景を踏まえると実務への影響は小さくないといえるでしょう。

個人事業主と法人で区切り方が違う点にも注意

個人事業主として美容室を経営している場合、この特例における「その年」は1月から12月までの1年間で区切られます。一方、法人化している美容室の場合は、会社の決算期(事業年度)で区切られます。年間300万円の上限や、4月1日という基準日との関係も、個人事業主か法人かで数え方が変わってくるため、自分がどちらの立場で判断すべきかを最初に確認しておくことが大切です。

美容室でよくある「少額資産」の具体例

美容室・サロンの設備投資で少額減価償却資産の特例の対象になりやすいものとしては、次のようなものが挙げられます。ただし、実際に対象になるかどうかは資産ごとの取得価額や使用実態によって判断されるため、あくまで一般的な例としてご覧ください。

設備の例 特例の対象になりやすいケース
ドライヤー・アイロン・カット用の小型器具 1台あたりの価格が上限未満に収まりやすい
POSレジ・タブレット・予約管理端末 本体価格が上限未満であれば対象になりやすい
待合スペースのソファ・棚などの備品 単価が上限未満であれば対象になりやすい
スタイリングチェア・シャンプー台 グレードによって上限を超えることがあり、通常の減価償却になるケースも多い

スタイリングチェアやシャンプー台は、機能やブランドによって価格帯の幅が大きいため、上限額に収まるかどうかは見積書ベースで一台ずつ確認する必要があります。

「少額減価償却資産の特例」「一括償却資産」「通常の減価償却」の違い

少額の資産を取得したときの経費計上の方法には、いくつかの選択肢があります。それぞれの違いを整理すると次のとおりです。

制度 対象となる取得価額 経費にできるタイミング 青色申告の要否
少額減価償却資産の特例 上限未満(2026年3月末までの取得は30万円未満、4月1日以後の取得は40万円未満の見込み) 取得した年に全額 必要
一括償却資産 20万円未満 3年间で均等に償却 不要(白色申告でも可)
通常の減価償却 上限なし 法定耐用年数に応じて分割 不要

白色申告の場合や、年間300万円の上限を超えて設備投資を行った場合には、少額減価償却資産の特例を使い切れないこともあります。その場合は一括償却資産や通常の減価償却との組み合わせを検討することになります。

適用を受けるときに気をつけたいポイント

確定申告書への記載と明細の保管が必要

この特例を使う場合、確定申告書(青色申告決算書)に、少額減価償却資産の取得価額の合計額などを記載する必要があります。また、対象資産の取得価額の明細(資産名・取得日・取得価額など)を別途保管しておくことも求められます。日々のレシート・納品書を整理しておく記帳の習慣が、そのまま特例適用の土台になります。キャッシュレス決済で購入した場合の仕訳の考え方は、PayPay・クレジットカード決済手数料の仕訳|美容室のキャッシュレス記帳でも解説しています。

300万円の上限を超える買い方に注意

店舗のリニューアルなどで椅子やシャンプー台を一度に何台も入れ替える場合、合計額が年間の上限を超えることがあります。上限を超えた部分については、この特例の対象にはならず、通常の減価償却などで処理することになります。購入時期を年またぎで分ける、法人であれば決算期をふまえて計画するなど、事前のシミュレーションが有効です。

取得日で基準が変わる過渡期の購入に注意

2026年の3月末をまたいで設備投資を計画している場合、契約日・納品日・使用開始日のどの時点を「取得の日」とするかによって、30万円未満か40万円未満かの基準が変わる可能性があります。境界線に近い金額の設備を検討している場合は、購入・契約のタイミングを税理士と相談してから決めることをおすすめします。

美容室オーナーが今から考えておきたいこと

設備投資は、単に「壊れたから買い替える」だけでなく、今年の利益の見通しと合わせて計画すると、税負担の調整に役立つ場面があります。例えば、今期の利益が大きく出そうなときに、もともと予定していたチェアの入れ替えを前倒しして少額減価償却資産の特例を使う、逆に大型の内装リニューアルは複数年に分けて実施し、通常の減価償却で毎年安定的に経費化する、といった考え方です。

まとまった資金が必要になる設備投資では、自己資金だけで対応するか、日本政策金融公庫などからの融資を利用するかもあわせて検討したいところです。創業融資の審査でチェックされるポイントは美容室の創業融資|日本政策金融公庫の審査に通るコツと自己資金の目安で、投資計画を数字に落とし込む書き方は美容室の事業計画書の書き方|創業融資に通る数字の作り方を税理士が解説で紹介していますので、あわせてご参照ください。

いずれの場合も、思いつきで購入時期を決めるのではなく、決算・確定申告の見通しとセットで考えることが、結果的に無理のない資金繰りと税負担につながります。

よくある質問

白色申告でも使えますか?

少額減価償却資産の特例は青色申告者を対象とした制度のため、白色申告のままでは利用できません。ただし、取得価額20万円未満の資産であれば、白色申告でも「一括償却資産」として3年間で均等に経費化する方法を選べます。青色申告への切り替えを検討する際は、あわせて確認しておくとよいでしょう。

中古のスタイリングチェアやシャンプー台も対象になりますか?

中古資産であっても、取得価額が上限未満であれば基本的な考え方は新品と同じです。ただし、中古資産は耐用年数の算定方法が新品と異なる場合があり、そもそも通常の減価償却で処理したほうが有利になるケースもあります。購入前に一度、税理士に相談して比較しておくと安心です。

リースで導入した設備は対象になりますか?

リース契約は資産を「購入」するものではないため、少額減価償却資産の特例の対象にはなりません。リースを利用した場合は、毎月支払うリース料を、支払った期の経費としてそのまま計上していく形になります。自己資金の状況や、まとめて経費にしたいか毎月安定した経費にしたいかによって、購入とリースのどちらが自店に合っているかを検討しましょう。

まとめ

少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている美容室・サロンであれば活用できる代表的な節税策のひとつです。2026年4月からは対象となる取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に広がる見込みで、ドライヤーやPOSレジ、スタイリングチェアなど美容室の設備投資でも使える場面が増えると考えられます。一方で、年間300万円の上限管理や、取得日をまたぐ場合の基準の違いなど、実務上は判断が難しい点も少なくありません。数値や適用条件は税制改正の内容が固まった後の最新の国税庁の案内で必ず確認し、具体的な設備投資の計画は税理士に相談しながら進めることをおすすめします。

この記事の内容でご不明な点や、自店の設備投資を少額減価償却資産の特例に当てはめられるかどうかの具体的な判断が必要な場合は、美容室専門の税理士事務所フェリスにお気軽にご相談ください。

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